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才能はなかったな、という言葉

まぎれもない事実で、自分でも時折口にする言葉

 

中学生のとき、たぶんもう手首は治らないよ、と病院で言われて

悲しかったけれど、どこかで安心したことを覚えている

 

才能がない、情熱がない

その事実と向き合わなくていい、ということ

当時はよくわかってなかったけれど、たぶん私が安心したのはそういうこと

 

18になり完全に音楽を手放して、ダンスを始めて

あー、私には才能なかったんだなー、と今更過ぎる事実をようやっと受け止めることができた

その代わりに、ダンスでは絶対結果を残そう、と思ったりして

 

そのダンスも一度手放して、数年が経って

勇気を出して、クラシックバレエのレッスンに行ってみた

 

そうしたら

やめちゃったものたち全部、無駄じゃなかったんだ、と思った

手放したのは「そのときそれをやる」という行為だけで

そこで得た学びも、感覚も、なんにも捨ててなかったってことに気づいた

というか、自分のなかに染み込んでいて、捨てたくても捨てられないものだった

 

才能もなかったし、情熱もなかったし、と

卑下するようなことを言ったところで

15年間、鍵盤に向かい続けた時間は、嘘じゃない

ピアノに救われたのは一度や二度じゃない

素直に言えばいいのだ、本当はもっとうまくなりたかったって

 

実際に取り組んでいるときは、

やめてしまったらすべてが無駄になる、とか

これまでかけてきた時間が、とか

結果が出ないなら、意味なんてない、とか

結構極端なことを思ってしまうけれど

 

この人生に無駄なことなんてひとつもない

全部がわたしの血肉になって流れている

 

ふいのタイミングで、何かに活きたり、思い出したり、

あぁそういうことだったのか、って気づいたりする

 

何十年と続いていく人生のどこかで、そんな瞬間があるかもしれない

 

それならわたしは、

わたしのやってきたことを卑下するのはやめようって思ったんだ